コラム
COLUMN
2020.08.06 看護師コラム
【動物看護師執筆】ペットロスについて
ペットロスとは、ペットを亡くしたという飼い主様の体験自体や、それによる悲しみのことを言います。
どんなに心の準備をしていても、どんなに大切にしていても、どんなに愛情をいっぱいに与えても、ペットの死は悲しくて辛いものです。
あの時こうすればよかった、もっとしてあげられることがあったのでは、と後悔する人も少なくはないはずです。
ペットを失ったときに大きな喪失感にさいなまれ、深い悲しみでいっぱいになるのは、それだけ愛していた証拠です。
私自身も過去に、12年間を共に過ごした猫を病気で亡くした時、ペットロスに陥りました。
学生だった当時、通学中、帰宅中の車の運転中に泣いたり、授業中にも涙が出てくるくらい、悲しみがなかなか消えずにつらい思いをしたのを覚えています。
そんな時支えになったのは、家族、2匹の同居猫の存在、学校で友人や先生方が慰めてくれたことでした。
時間の経過が悲しみを癒してくれるのは確かですが、それ以上に誰かに話しを聞いてもらうとか、泣きたいときは思い切り泣く、ということが解決の近道だと私は思います。
ペットロスを克服する方法は人それぞれです。
ペットを亡くした経緯によっても変わってくるでしょう。
<悲しみの乗り越えかた>
ペットロスは、ペットと共に暮らした人にはだれにでも起こりうることです。
ペットロスとはどのような状態なのかを知り、重症にならないようにすることが大切です。
ペットを失ったとき、人の心はいくつかのステップを経て乗り越えていくといわれています。
- 否定・・・死に直面したとき、信じたくない、そんなはずはないという感情になります。事実を否定することで自分の心を守ろうとする自己防衛本能です。
- 交渉・・・時間を戻せないか、神様がなんとかしてくれないかお願いする、など非現実的な願望をもちます。失ったものを取り返せないかと自分の中で交渉するのです。
- 怒り・・・あのときこうしなかったあの人が悪い、あの選択をした自分が悪い、など怒りの感情を抱きます。
- 受容・・・現実は変えられないと、起こったことを理解できるようになります。
- 解決・・・これらの過程を経て、自分の気持ちを整理することができ、悲しみが徐々に癒え始めます。
これらのステップは、立ち直っていくために必要で、正常な心の経過です。
泣きたいときは我慢せずに思いっきり泣くのも大切です。
ペットの寿命は人間の寿命よりはるかに短く、私たちはペットの死を看取ることを避けられません。
ペットの寿命を否定するのではなく、短くてもペットが私たちに与えてくれた幸せと癒し、素晴らしい暮らしに感謝をし、ペットの死を安らかに受け止めたいものです。
人の死の場合、お通夜、お葬式、初七日、四十九日、一回忌などを行い、親しい人たちが集まり、家族と一緒に故人を偲んでくれますが、
ペットの場合は、人のように一緒に死を悲しみ、偲んでくれる人が少ないために悲しみが長引くことが多いようです。
悲しみの感情を自分だけで抑えるのは大変つらいことです。
誰かに聞いてもらう、救いを求めるのは大切なことです。
<後悔しないために大切なこと>
病気や事故でペットを失ったとき、多くの人は後悔をするでしょう。
私もその一人でした。
愛猫が苦しそうにしているのに気づき、病院へ連れて行った時には病態はかなり進行していて、もっと早く変化に気づいてあげられていたら、治っていたかもしれないと後悔したものです。
過去に愛猫を亡くした経験と、動物看護師になってから気づいたことは、定期的な健康診断の大切さです。
犬や猫は人間の5倍くらいのスピードで年を取ります。
一見元気そうに見えても、体の中では変化が起きているかもしれませんし、
動物は痛みや不調を隠そうとする傾向があります。
年に1度は血液検査等の健康診断をして、病気の早期発見・早期治療にあたることが大切です。
また、健康診断で異常がなくても、健康だったというデータを残すことは、今後の生活のためにも大切なことです。
後に病気になった時の指標になりますので、決して無駄なことではありません。
また、不慮の事故を無くすためにも、猫ちゃんを室内飼いにするとか、わんちゃんの散歩の際は必ずリードを繋げて歩くなど、車による事故には十分に注意してください。
車で移動中、急ブレーキでフロントガラスにぶつかってしまった、窓を開けていたら外に飛び出してしまった、という患者さんも経験しています。
室内や散歩の際の誤食、拾い食いなどにも十分に注意しましょう。
ペットが口にしてはいけないものは届くところに置かない、ペットに食べさせてはいけないものを与えない、など気を付けてくださいね。
言葉を話せないペットたちの健康管理は飼い主さんの義務です。
日ごろからペットとのコミュニケーションを欠かさず、小さな変化に気づいてあげましょう。
大切なのは、愛するペットが亡くなった後に、もっとこうすればよかった、できることがあったのではないかと後悔したり、誰かを責めたりすることではなく、
たくさんの癒しや笑いをくれたこと、悲しい時もうれしい時もそばにいてくれたこと、一緒に過ごせた時間に感謝をして旅立ちを見送ってあげることです。
きっと、愛情を与えた分、それ以上に愛情を返してくれたことでしょう。
天国でも優しく見守ってくれていると信じて、少しずつ前を向いていきましょう。