福井藤島どうぶつ病院 福井藤島どうぶつ病院

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2022.03.13 健康診断 動物の病気

【獣医師解説】血液健康診断でわかること

当院ではわんちゃんにはフィラリア検査とともに、猫ちゃんにはワクチンなどとともに健康診断をお勧めしており、多くのわんちゃん・猫ちゃんが受けてくれています。

しかし、
「血液検査で何がわかるの?」
「検査は受けたものの、結果の見方がわからない。。。」
という飼い主様も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、血液健康診断でわかることについて解説していきたいと思います。

※各病院によって健康診断の項目は異なりますので、ここではあくまで「当院の場合」をご説明していきます。

どんなコースがあるの?

当院ではわんちゃん・猫ちゃんともに3つのコースをご用意しています。

①ベーシックコース

生化学検査19項目、血球血液検査

→一般的な内臓の数値などをみることができます。項目については後述します。
 若い子(1-6歳頃)にお勧めしています。

②安心コース

犬:ベーシックコース+炎症検査(CRP)、甲状腺ホルモン検査(FT4)、肝機能検査(TBA)
猫:ベーシックコース+甲状腺ホルモン検査(T4)、腎臓病早期発見マーカー(SDMA)

→ベーシックコースに加え、特に高齢で異常の出やすい項目をみることができます。
 初めて健康診断を受ける子やシニアの子(7歳〜)にお勧めしています。

③わんドック・にゃんドック

血液検査だけでなく、尿検査や便検査、画像検査(レントゲン、超音波検査)など全身の精査を行います。
詳しくはこちらをお読みください。
https://fukui-fuji-ah.com/dogdock/

次にそれぞれの検査項目について解説していきます。

血球血液検査について

CBC(Complete Blood Count)とも呼ばれます。
血液の成分である赤血球、白血球、血小板の数やヘモグロビン濃度などを測定します。

貧血の有無、炎症の有無、止血異常の有無などを判断します。

生化学検査について

19項目と項目数が多いのでそれぞれを簡単に解説していきます。

総蛋白(TP)
血中の蛋白の濃度で、アルブミンとグロブリンの総和を表します。
そのためアルブミン、グロブリンの増減に左右されます。

アルブミン(Alb)
血中の蛋白成分です。消化管や腎臓からの喪失、肝不全で低値となります。

A/G比
アルブミンとグロブリンの比です。
グロブリン(Grob)は免疫システムに重要な「抗体」の成分です。
感染時やグロブリンを産生する細胞の腫瘍などの時に上昇します。

肝数値:AST, ALT, ALP, GGT, T-bil
主に肝細胞が障害されたときや胆汁うっ滞などのときに上昇します。
しかし、筋肉や胃腸など肝臓以外の臓器の異常で上昇することもあります。
またALPは成長期の動物では高値となります。
人間ではお酒の飲みすぎなどで上昇することがありますね。

腎数値:尿素窒素(BUN)、クレアチニン(Cre)
主に腎臓の機能が低下したときに上昇します。
食事の影響や循環血液量が低下した時などにも上昇することがあります。

血糖値(Glu)
主に糖尿病で上昇しますが、特に猫ちゃんは採血時に興奮すると高血糖となることがあります。
低血糖(50未満)の場合は命に関わるため早急な精査が必要です。

リパーゼ(Lip)
膵臓で合成される消化酵素で、膵臓が障害されると上昇します。
腎臓から排泄されるので、腎機能が低下しているときにも上昇します。

総コレステロール(T-cho)、中性脂肪(TG)
高脂血症の指標となりますが、ホルモン病や食事の影響などを受けるため、全身状態を総合して判断していきます。

カルシウム(Ca)
悪性腫瘍で上昇することがあります。

無機リン(IP)
腎疾患で上昇します。成長期の動物では高値を示します。

電解質(Na, K, Cl)
脱水や下痢、嘔吐など水分の移動により変動します。

安心コースでの追加検査について

CRP(犬)
炎症の有無を調べます。

甲状腺ホルモン(T4,FT4)
甲状腺疾患の診断に用います。
シニア犬では甲状腺機能低下症が、シニア猫では甲状腺機能亢進症が多くみられます。

総胆汁酸(TBA)
肝機能の評価に用います。
先天性の血管異常である門脈体循環シャントでも上昇するため、若い子でも一度は測定しておくと安心です。

SDMA(猫)
腎数値(BUN, Cre)が上昇するよりも早期に上昇することが知られている腎機能マーカーです。
シニア猫では腎臓病が多くみられ、早期に発見し治療を開始することで進行を遅らせることができます。

いかがでしたか?ぜひ参考にしてくださいね😊

気をつけていただきたいのは、上記の通り1つの項目が変動する理由はいくつか考えられるということです。
そのため「この数値が悪かったからこの病気です。」と診断することはできず、追加の検査を行なったり全身の状態から総合的に判断していく必要があります。

また血液検査だけではわからないこともたくさんあります。
例えば心臓の状態や腫瘍がないかどうかなどです。
当院では身体検査でできるだけ皮膚や耳、歯、心臓などの状態もチェックしていますが、心配がある子にはより詳細な検査を行うことができる「わんドック」「にゃんドック」をお勧めしておりますので、ご検討くださいね。

検査値などについてご不明な点があればお気軽にご質問ください。

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