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コラム

COLUMN

2020.10.23 動物の病気

【獣医師解説】がん、腫瘍って何?診断・治療法は?

現在、人間では2人に1人の確率でがんに罹患すると言われています。
犬や猫も平均寿命が長くなってきたことで、がんに罹患することがとても多くなり、死因の第1位となっています。
でも、「がん」って一体何者なのでしょうか?

今回は「がん」「腫瘍」について解説していきます。

「がん」「腫瘍」について

動物の体を作っている細胞は、本来傷を受けると修復をする機能が備わっています。
しかし、細胞の遺伝子になんらかの異常が起こると細胞が増殖を繰り返し、止まらなくなってしまうことがあります。これを細胞の「腫瘍化」と言い、形成された細胞の塊を「腫瘍」と呼びます。

この「腫瘍」には良性と悪性のものがあり、このうち悪性の腫瘍が「がん」と呼ばれています。
では良性・悪性とはどういうことでしょうか?

良性の腫瘍はある程度元の細胞の形や機能を保ったまま、秩序を持って増殖していきます。そうでないもの、無秩序に増殖を繰り返すものが悪性です。
そのためどんどん他の組織に広がって(=浸潤)いったり、血管やリンパ管を通って元の場所から離れた所で増殖(=転移)したりしていきます。

細胞が増殖するためには栄養が必要です。「がん」が成長するために周囲からどんどん栄養を奪い取っていってしまうため、体が衰弱してしまい(=悪液質)、最終的には命を奪います。

一般的に悪性腫瘍は進行するスピードが速いです。
そのため動物ではかなり進行してから発見されることも多く、健康診断などでの早期発見が望まれます。
また良性の腫瘍が悪性になる(=悪性転換)こともあるので、良性でも注意深く経過観察する必要があります。

どうしてがんになるの?

上記の通り、がんは細胞の遺伝子の異常により発生します。そのためはっきりとした原因はわからないことが多いです。
ただし猫の消化器型リンパ腫と飼い主の喫煙の間には因果関係があることや、白い毛の猫は日光に当たることで扁平上皮癌が発生しやすいこと、猫エイズ・白血病ウイルスが発がんに関与していることなどがわかっています。

診断方法は?

体の表面のできものは飼い主さんが見つけて来院されることが多いです。
また何らかの症状があり検査した際に胸腔内や腹腔内にできものが見つかることがあります。
できもののある場所や大きさなどによって診断方法は異なりますが、ここでは一般的な流れについて説明します。

①問診や触診、画像検査などでどのような腫瘍の可能性が考えられるかを判断します。
②必要であれば細胞診(※)を行います(ほとんどの場合は無麻酔で行うことができます)
(※細い針で細胞を取り、どんな腫瘍かを調べる検査)
採取できる細胞数が限られているため、確定診断を付けることができないこともありますが、おおよその予測(治療プラン)を立てるために必要な検査です。
細胞診が困難な場合は、麻酔下で腫瘍の全部又は一部を切り取って組織検査を行なうこともあります。
③転移の有無などによりステージ分類をします。

残念ながら腫瘍はその見た目だけで診断することはできません。
正しい診断をつけることがその後の治療を左右しますので、とても大切なプロセスです。

治療法は?

診断に基づき、治療のプランを立てていきます。
腫瘍の種類やステージ、動物の状態などによって異なりますので、個々のケースに合わせて治療法を決めていきます。

一般的に腫瘍の治療にはその目的によって
①根治治療(腫瘍を完全に根絶することが目的)
②緩和治療(腫瘍の増殖をコントロールし、生活の質(QOL)を維持・向上することが目的)
③対症療法(腫瘍に対する治療ではなくQOLを向上することが目的)
があります。

①②の方法として具体的には
・外科手術
・抗がん剤治療
・放射線治療
・レーザー温熱療法
などがあり、これらを組み合わせて治療を行います。
詳しくはこちらのページをご覧ください。https://fukui-fuji-ah.com/medical/oncology/
③の対症療法は、痛み止めや吐き気止め、点滴などそれぞれの症状に合わせて行います。

ステージが進めば進むほど①根治治療は困難になってしまうため、前述したように早期発見が望まれます。
ただし末期だからといって諦めるのではなく、②緩和治療や③対症療法を行うことでQOLを向上させることができるケースも多いので、何か出来ることがないかご相談をしていただけたらなと思います。

また、治療方針はご家族の意向を伺い、最善のプランを立てていくことが大切です。
動物は言葉を話さないため本人の意思を聞くことができませんが、「この子にとってどうしてあげるのが1番良いのか」ということをご家族で話し合っていただき、かかりつけの獣医師ともしっかり相談して決めていきましょう。

腫瘍の種類や治療法は多岐にわたるため、幅広い知見が必要となります。
当院の院長は福井市・坂井市エリア唯一の獣医がん学会腫瘍科認定医として、常によりよい治療法をご提案できるよう努力をしております。
腫瘍について何かお困りのことがありましたらご相談ください。

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