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コラム

COLUMN

2018.12.02 動物の病気

【獣医師解説】犬の下痢の原因、対処法、治療法は?

犬の下痢は日常的に起こりやすく、飼い主さんも気付きやすい症状であることから、動物病院への来院理由としても多いです。また、一言で下痢と言っても、2~3日で完治するような軽症なこともあれば、命に関わる重篤な症状の場合もあり、動物病院に連れていくべきかどうか悩んだ経験がある飼い主さんも多いのではないでしょうか。

今回は、そんな犬の下痢についてまとめました。

下痢の症状は?

下痢には大きく分けて小腸性下痢と大腸性下痢があることをご存知でしょうか。

犬の消化管は、口→食道→胃→十二指腸→空腸→回腸→(盲腸)→結腸→直腸 の順で構成されており、十二指腸~回腸までを小腸、それ以降を大腸と分類されています。

どの部位が原因で下痢をしているのかによって、症状や検査、治療法などが異なってくるため、犬の下痢で来院された場合、まずはその下痢が小腸性なのか大腸性なのかを見極めていきます。

以下にそれぞれの主な症状をまとめました。

小腸性下痢

排便頻度…健康時と変わらない、もしくは軽度に増加します。

便の性状…通常は便の量が増加します。小腸に出血がある場合は、鮮血の付着は無く、胃酸などによって色が黒色に変色した墨のような便(黒色タール便)がみられます。

その他の症状…食欲は変わらない~低下(稀に増加するケースも)。体重は徐々に減少します。また、同時に嘔吐もみられることがあります。

大腸性下痢

排便頻度…(顕著に)増加します。

排便の様子…排便困難・しぶり(うんちを出そうとするが出ない状態)が多くみられます。また、稀に便失禁がおこります。

便の性状…便の量は正常~減少。しばしば粘液(ゼリー状)の付着があります。大腸に出血がある場合は、鮮血の付着がみられます。

その他の症状…食欲は変わらないことが多く、体重減少も稀です。また、同時に嘔吐もみられることがあります。

下痢の原因は?

下痢はとても多くの原因からおこりうる症状です。

大きく分けると、食事性、薬物・中毒・異物の摂取、腸の疾患、腸以外の消化器疾患、消化器以外の臓器の疾患、感染症、環境要因(ストレス)、などに分けることができます。

食事性…長期的な下痢の場合、食事アレルギーの可能性が高いです。また、食事やおやつの内容を変更してから下痢がおこった場合は、食事の見直しが必要です。

薬物・中毒・異物の摂取…多くの人工物や化学物質は犬が食べてしまうと下痢を起こしてしまう危険性があります。また、下痢だけで無く命に関わる疾患につながる可能性もあるため注意が必要です。犬が誤食しそうなものは極力生活スペースには置かないようにしましょう。

腸の疾患…炎症性腸疾患、リンパ管拡張症、消化管イレウス、腫瘍など多くの疾患があります。腸にどんな病気が隠れているのかを見極めることは難しいことが多く、画像検査や内視鏡検査など各種検査を組み合わせる必要があります。

腸以外の消化器疾患…肝臓、胆のう、膵臓が原因で下痢を起こすことも多くあります。

消化器以外の臓器の疾患…腎臓(高窒素血症)や子宮(子宮蓄膿症)の疾患、ホルモンの病気(アジソン病、糖尿病)など、多くの疾患が下痢を引き起こす可能性があります。

感染症…様々な感染症が下痢を引き起こす可能性があります。原因となる主な寄生虫やウイルスは薬やワクチンで予防できるので、しっかり予防を行いましょう。

環境要因(ストレス)…あらゆる環境の変化が原因で下痢がおこる可能性があります。その結果、調子を崩してしまうこともあるため、思い当たるストレス要因があれば取り除いてあげましょう。なかなか治らない場合はストレス以外の原因があるかもしれません。

下痢の検査法は?

先ほど述べた通り、単に下痢といっても、腸だけで無くとても多くの原因が考えられるので、しっかりとした検査を行わないと、適切な治療ができません。

また、軽度な下痢の症状から、重篤な病気(腫瘍など)がみつかることもしばしばあるので、下痢の検査はとても重要です。

具体的には、まずは問診と糞便検査を行います。

問診では下痢がどれぐらい続いているのか、小腸性か大腸性かどちらの症状が出ているのか、現在の食事の内容や誤って食べてしまったものはないか、症状が出る前後で環境の変化はなかったか、下痢以外の体の不調はないか、などの確認を行い無数の原因の中からある程度の絞り込みを行います。

糞便検査では、新鮮な便を用いて、腸内細菌の様子や寄生虫卵の有無、細胞などの出現がないかなどをみていきます。

上記検査と身体検査を参考に、必要に応じて次の検査(血液検査、レントゲン検査、超音波検査、内視鏡検査、直腸検査など)に進んでいきます。

下痢の治療は?

先にも述べた通り、下痢には多くの原因があり、その原因によって適切な治療法が存在します。

しばしば、同じ薬を使用しているのに、原因によっては治療薬になったり悪化原因になったりすることもあります。例えば、一般的に用いられる止瀉薬(下痢止め)は、感染症が原因の下痢で使用してはいけないケースが存在します。また、抗炎症薬や免疫抑制剤は炎症性腸疾患などの病気には有効ですが、感染症やホルモン病が原因の下痢では逆に病気を悪化させてしうことがあります。

そのため、適切な検査を行うことで下痢の原因を診断することがとても重要です。

下痢をおこした時の対処法について

愛犬が下痢になった場合、まずは絶食させることが重要だと考える飼い主さんもいるかもしれません。しかし、絶食をさせることは、ストレスや過食が原因の軽度な下痢の場合は有効なこともありますが、脱水状態にある子や、腫瘍が原因で下痢をおこしている子では急激な体調悪化を引き起こす可能性があるので注意が必要です。

また、おやつを与えるのを中止したり、食事変更後に下痢がおこした場合は元の食事に戻すなどの、食事の内容を見直すことも重要です。しかし、食事アレルギーの子の場合、複数のアレルゲンが原因となることが多いので、闇雲に食事内容を変更しただけでは良くならないケースがほとんどです。

そのため、愛犬が下痢をおこした場合、まず動物病院への受診を検討してみてください。その子の状態に合わせた適切な対処法や処方食の提案ができるので飼い主さんも安心できるのではないかと思います。

病院に行くときは

検査のところでも述べた通り、犬が下痢をした場合はまず問診と糞便検査を行います。

その際に、現在与えているフードや下痢の発症時期などのメモを持参していただくと病気の診断に有用になります。

また、新鮮便を持参していただくと、糞便検査を行うことができます。

その他、何かわからないことや心配なことがございましたら当院までご相談ください。

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