コラム
COLUMN
2020.03.30 コラム 動物の病気
【獣医師解説】フィラリア予防の期間は?
今回は、春からわんちゃん・猫ちゃん・フェレットさんに必要なフィラリア予防についてのお話しです。
当院ではフィラリア検査とともに健康診断をおすすめしており、すでにたくさんの子たちが受診してくれています。
これまでは5月~12月の予防が推奨されておりましたが、
年々暖冬の影響で蚊の発生が早まっているため、早めに開始する方が安心だと思います。
またフィラリア予防を開始する前には必ず血液検査が必要となります。
以下にその理由をお話しします。
フィラリアとは?
フィラリアとは蚊を媒介して感染し主に心臓に寄生する寄生虫です。
数十年前はフィラリアに感染し亡くなるわんちゃんが多かったのですが、
予防できるようになってからは寿命が大幅に伸びたほどの、とても重要な感染症です。
このお薬を開発した大村智さんは、2015年に「線虫の寄生によって引き起こされる感染症に対する新たな治療法に関する発見」でノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
フィラリア症についてさらに詳しくはこちら
フィラリアは猫ちゃん、フェレットさんにも感染しますので、予防が必要です。
フィラリア予防薬を飲ませる期間
フィラリア予防薬には他の予防薬とは異なる特徴があります。
それは「フィラリアが動物の体内に入ってから1ヶ月以内に飲んで駆虫する薬」という特徴です。
※スポットタイプのものもあります
蚊に刺されるのを予防するわけではありません。
また1ヶ月以上経過するとフィラリアが体内で成長してしまい、薬が効かなくなります。
つまりフィラリア予防薬を飲ませる期間は
「蚊が発生した1ヶ月後から、いなくなった1ヶ月後」
飲ませる頻度は
「1ヶ月に1回」 となります。
一般的に、蚊は気温が15度を超えると吸血を開始すると言われています。
また、涼しくなったからと12月に最後のお薬をのませないでおくと、11月に感染したフィラリアが冬の間に成長してしまいます。
そのため最後の1回がとても重要です。
フィラリア予防薬を飲ませる前に
フィラリア予防薬は「要指示医薬品」です。
これに指定されている薬は獣医師の専門的な知識と技術をもって使用しなければ危険であるため、
獣医師の処方・指示がなければ使用することができません。
さらにフィラリア予防薬は
「投与前に必ず血液検査を行い、ミクロフィラリアがいないことを確認した後、投薬を行うこと」
と効能書に明記されています。
ミクロフィラリアがいる状態でフィラリア予防薬を内服すると、血中のミクロフィラリアが死滅して
感染犬がショックを起こして最悪の場合死に至る可能性があるからです。
※猫ちゃんの体内ではミクロフィラリアが産生されることは稀なので検査は必要ありません
そのため
・フィラリア予防薬をインターネットなどで購入すること
・血液検査なしで予防を開始すること
・他の犬に出されたフィラリア薬を飼い主様の判断で飲ませること
は絶対にやめてください。
フィラリアは予防が一番です
当院が開院して間もない頃、フィラリア症末期のわんちゃんが来院しました。
保護施設からやってきたとてもかわいくて大人しい子でしたが、心臓へのフィラリア寄生に伴う右心不全、肺高血圧症、肺炎、さらには腎機能障害も起こしており、初診時舌の色は真っ青(チアノーゼ)で、非常に重篤な状態でした。
血液中にはフィラリアの子虫であるミクロフィラリアがうじゃうじゃと出ていました。
この子は残念ながら数週間後に亡くなってしまいました。
フィラリア予防さえしていればこの子はこんなに苦しまなくて済んだし、もっともっと長生きできたはずなのに、、、と
改めて予防の大切さとこの寄生虫の恐ろしさを感じました。
現在、フィラリアが心臓に寄生してしまうと治療はとても困難であり、一度フィラリアで悪くなった臓器は完全には元に戻りません。
ですから、しっかり予防することがとても大切です。
飼い主様もフィラリア予防薬の特徴を理解していただき、毎年、毎月飲ませ忘れのないように気をつけてくださいね。
新型コロナウイルス感染防止のため、フィラリア検査などの予防診療の予約診療を開始しましたので
ぜひご利用ください。
詳しくはこちらをお読みください。