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コラム

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2019.05.16 動物の病気

【獣医師解説】ノミ・マダニ予防の重要性① 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)他

昨日東京都内で初めてマダニが媒介するウイルス感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」に感染した男性が確認されたというニュースが出ていましたね。

SFTSは命に関わる感染症です。西日本地域で主に発生しており、福井県内でも確認されています。

http://www.pref.fukui.lg.jp/doc/kenkou/kansensyo-yobousessyu/dani.html

今回はSFTSについても含め、ノミ・マダニ予防の重要性について解説していきます。

マダニについて

マダニは昆虫ではなく、クモの仲間です。マダニと言えばまん丸な姿を想像する方も多いと思いますが、それは吸血しパンパンに膨らんだ姿であり、本来は3,4mmしかありません。

普段は草むらの中に身を潜めていて、動物が近づくと匂いや体温、二酸化炭素などに反応して飛びうつると言われています。

動物の体表に付いたマダニは、皮膚を切り裂いて口を刺し込み、セメント様の物質で固めて、吸血と唾液の吐き戻しを開始します。そのため無理やり引っ張ると、噛み付いている部分が残ったまま体だけちぎれてしまいます。また、マダニの唾液に病原体が含まれていると噛まれた動物は感染してしまいます。

吸血したマダニは、繁殖条件が揃っていると1ヶ月で2000-3000個も産卵すると言われています。

マダニによる被害

○直接的な被害

・吸血による貧血

・皮膚炎:マダニの唾液に対するアレルギーをおこし、強いかゆみなどが起きます。

・ダニ麻痺:ダニの種類によっては神経障害を引き起こす毒性物質を産生します。

 

○マダニが媒介する病気
マダニによる被害は直接的なものだけでなく、病原体を介して発症するものも多数存在します。重症熱性血小板減少症候群(SFTS)もその一つです。
以下にマダニが運んでくる代表的な感染症を挙げていきます。

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

感染すると6日~2週間の潜伏期間を経て発熱、消化器症状認められることが多いです。その他頭痛、筋肉痛、意識障害、失語などの神経症状、皮下出血や下血などの出血症状を起こすこともあります。

犬や猫での症例は少ないですが、人と同様の症状を示していたようです。またSFTSに感染した猫を診察した獣医師と動物看護師が感染した例や、SFTSに感染した犬の看病をしていた飼い主が感染した例も報告されており、マダニに噛まれなくても犬や猫を介して感染することが示唆されています。

有効な薬やワクチンはなく、対症療法を行うしかありません。

SFTSは国内では2013年1月に初めて患者が報告され、これまで404人が感染、65人が死亡しています。福井県でも2件の感染が報告されています。

バベシア症(犬)

マダニから感染したバベシアと呼ばれる原虫が犬の赤血球に寄生します。発熱、黄疸、貧血などの症状が出て、重症の場合には多臓器不全を起こし死に至ることもあります。

福井県での報告は見当たりませんでしたが、西日本を中心に日本全国で発生しており、年間3500件以上が報告されています。

ヘモプラズマ症(猫)

マダニによる吸血、猫同士の喧嘩などにより感染した病原体が猫の赤血球に寄生し、赤血球が破壊され、溶血性貧血が発生する疾患です。

ライム病(人獣共通感染症)

犬は発熱や食欲不振、全身性痙攣、関節炎などを呈し、人は赤い丘疹(マダニに咬まれた部分を中心とする遊走性紅斑)や発熱、関節痛などインフルエンザ様症状を呈します。2018年に福井県でも報告されています。

 

その他にも日本紅斑熱、Q熱など数多くの病気がマダニによって媒介されます。

このようにマダニはそれ自体が吸血するだけでなく、人やペットに数多くの病気をもたらす可能性があります。噛まれてしまってからでは遅いのです。短時間であってもお散歩をするわんちゃんや外に出る猫ちゃんは必ずマダニの予防をしてあげてください。

犬もしくは猫のマダニの予防がまだお済みでない方や、詳しく聞きたい方は、一度当院までお問い合わせください。

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