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コラム

COLUMN

2020.08.06 動物の病気

【獣医師解説】サマーカットに要注意

今年も本格的に暑くなってきましたね。
この季節は「熱中症に注意!」ということは飼い主様の間でかなり浸透してきているようで、ここ最近は熱中症で運び込まれてくるケースは減少しているように感じます。

そこで今回は、もう一つ暑い夏に気をつけていただきたいこととして、
見た目に涼しい「サマーカット」の注意点について解説していきます。

サマーカットは必要?

暑い夏に、毛で全身を覆われているわんちゃんを見ると「暑くてかわいそう、、、」と感じるかもしれません。
しかし基本的にわんちゃんは季節によって毛の量を調節することができるので、毛を短くする必要はないと考えられています。
※ただし真夏の暑い日にまで対応できるわけではないので、部屋の温度は快適に保ってあげてくださいね。

皮膚病などで定期的なシャンプーが必要、毛玉が出来やすいなどの場合は毛を短くすることをお勧めすることもありますが、それ以外ではあまり積極的にはお勧めしません。
サマーカットには以下に述べるようにデメリットがあります。
よく検討した上でカットしてあげてください。

サマーカットのデメリット

①毛が伸びてこなくなることがある

サマーカットに限らず、手術時の毛刈りなどの毛を短く刈る処置の後、毛が伸びてこなくなることがあります。
「毛刈り後脱毛」と呼ばれ、毛が伸びるところと伸びないところがまだらになってしまうこともよくあります。
また、毛が伸びてきたとしても毛質が変わってしまうことがあります。

特にポメラニアンなどの長毛種で起こりやすく、毛を短くすればするほど起きやすくなると言われています。
これまでチワワ、ミニチュアダックスフント、パピヨン、柴犬、シベリアンハスキーなどの犬と、猫でも経験があります。どの種類でも起こりうるので注意が必要です。

残念ながらこの「毛刈り後脱毛」は詳しい原因がわかっておらず、また治療法も確立されていません。
サマーカットをする際には、今後伸びてこなくなる可能性があることを十分に理解しておく必要があります。

②紫外線が直接肌に当たってしまう

スキンケアのところでも解説しましたが、わんちゃんの皮膚は人間の1/3程度の厚さしかなく、それを毛で覆うことで守っています。
日光や紫外線からも被毛が守ってくれているのですが、サマーカットをすることで、それらが薄い皮膚に直接当たることになってしまいます。
そのため、むしろ毛がある時よりも暑く感じてしまったり、過剰に紫外線を浴びることで皮膚炎を起こす可能性や、ひどいと熱傷を起こす可能性もあります。
つまりサマーカットは必ずしも暑さ対策にはならず、むしろ逆効果になってしまうこともあるということです。
サマーカットした後に外出する際には、なるべく日の落ちた時間を選ぶ、日陰を選ぶ、服を着せるなど、紫外線対策を考えてあげてくださいね。

また冷房の効いた部屋では体が冷えすぎてしまうこともありますので、注意してください。

もしもサマーカットにする場合には地肌が見えるほど短くはしないようにしましょう。
おなか側だけ短くしてあげるのも効果的だと思います。


暑い夏を快適に過ごせるよう、色々工夫してあげてくださいね。

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