コラム
COLUMN
2021.03.04 看護師コラム
<動物看護師日記>甚之介ちゃんとの約束〜リハビリについて〜
こんにちは。動物看護師の廷々です。
今日は、甚之介ちゃんというチワワの男の子がみせてくれた奇跡について
甚之介ちゃんと、飼い主さまとの思い出を頭に浮かべながら書いてみようと思います。
甚之介ちゃんは、大学病院で起源不明の髄膜脳脊髄炎という脳の病気の診断を受け、
なにかできることはないか、少しでも可能性があるならば…と、飼い主さまがリハビリを希望して当院に来られました。
私自身は、骨折の手術後などの骨格系のリハビリは担当したことがあるものの、
脳炎など脳の病気からのリハビリを経験したことがなく、
そういった症例もあまりない中で、何をしてあげられるのか、何が有効なのか考えながら取り組みました。
飼い主さまと相談した結果、週に1回、1時間ほどお預かりしてリハビリすることになりました。
リハビリを始めたころは、
・立ったままの姿勢を保つことができない
・四肢がクロスしてしまう
・歩くと後ろ足が両足とも浮いてしまう
・障害物を乗り越えられない
このような状態でした。
元気な時と比べて体重も1キロ近く減ってしまっていたので、
筋肉をつける目的+脳を刺激する目的でのリハビリのメニューを組みました。
・バランスボール
・歩行練習
・マッサージ、ストレッチ
・ひっこめ反射の誘発
・後ろ足だけ、前足だけを使って歩行させる
・障害物を乗り越える練習
そして、甚之介ちゃんは食欲が旺盛だったので、ノーズワークという、オヤツ探しトレーニングを取り入れました。
自作したノーズワークのマットです。
仕掛けに隠したオヤツを探しています。
楽しそうにオヤツを探す姿がとてもかわいかったです😊
リハビリは甚之介ちゃんにとって、とても効果的だったようで、
3回目くらいから歩行や姿勢などに改善がみられました。
はじめは1.2kgしかなかった体重も、17回目のリハビリ時には2kgになりました。
日常生活でも見違えるくらいの回復をみせてくれた甚之介ちゃん。
飼い主さまがとても喜んでくれ、回数を重ねる毎に飼い主さまの表情も明るくなっていったのを覚えています。
私も毎週甚之介ちゃんと飼い主さまに会えるのを楽しみにしていましたが、
リハビリを始めて半年ほど経ったころに突然お別れがきてしまいました。
喪失感が強く、しばらく自分の中で心の整理がつかなかったのですが、
飼い主さまから、
「この子のリハビリの経験を、他の悩める飼い主さまやペットを救うことに繋げてください」
という言葉をいただき、このような形で発信させていただいています。
甚之介ちゃんと飼い主さまと出会ったこと、リハビリをした経験、驚くほどの回復をみせてくれたこと、すべてが私の動物看護師人生の中で大きな糧になりました。
一生懸命オヤツを探す姿や楽しそうにリハビリをする姿、自分で立って歩くことができるようになったり、障害物を乗り越えられるようになったりと、たくさんの奇跡をみせてくれた甚之介ちゃん、そしてこのような機会を与えてくださった飼い主さまには心から感謝しています。
歩けること、食べること、寝ること、、、
そんな“普通”に思えることがとても幸せで、尊いことだとこの仕事をしていると何度も思います。
甚之介ちゃんには、そんな普通に思えることがどんなに幸せか改めて気づかされました。
ペットと暮らすなかで、高齢になると若いときと比べて行動に変化が見られたり、認知症のような行動がみられたり、大きい病気が発覚して混乱してしまったり…様々な悩みがでてくると思います。
できないことが増えてくると気分が沈んでしまいますよね。
そんな時には、歳だから…と諦めずに少しでも何かできたことに目を向け、そしてリハビリを通してできることを増やしてみませんか。
些細なことでも構いませんので、お困りのことがあればぜひご来院ください。
飼い主さまとペットの幸せな暮らしを最大限サポートしていきます。
かわいい甚之介ちゃんが天国で美味しいものをたくさん食べて元気に走り回っていることを願っています。