コラム
COLUMN
2019.05.04 Cat Friendly 看護師コラム
【動物看護師執筆】猫コラム⑥ ワクチンについて
ワクチンとは感染症を予防するために病原体を無毒化または弱毒化した薬液です。
ワクチンを接種すると、感染症に対する免疫力をつけることができます。
ワクチンで予防できる感染症
・猫ウイルス性鼻気管炎
くしゃみ、鼻水、軽度の発熱などの風邪のような症状のほか、角膜炎や結膜炎が見られ、
重度になると死亡する恐れもあります。
ウイルスを体内に持っている猫(キャリアー)からの感染のほか、空気中の微粒子、食器、寝具などからも感染します。
・猫カリシウイルス感染症
くしゃみ、鼻水、軽度の発熱などの風邪のような症状を起こします。
口腔内に潰瘍、水疱ができるのが特徴で、稀に急性角膜炎、鼻炎、一過性の発熱が見られるほか、間接と筋肉の痛みからうまく歩けないといった症状が出ることもあります。
また、子猫の場合はほかの病気との合併症により症状が悪化し、死亡することもあります。
キャリアーから感染します。
・猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)
子猫では食欲・元気喪失、発熱、嘔吐、下痢などの症状が見られることもある死亡率の高い病気です。体力がない子猫などはたった1日で死ぬこともある怖い病気です。
妊娠中の母猫が感染すると流産、異常産を起こすこともあります。
経過が早く、治療が困難なため、ワクチンによる予防が有効です。
・猫クラミジア感染症
主に感染猫との接触でうつります。結膜炎が代表的な症状ですが、くしゃみ、鼻水、咳や肺炎を起こすことも。
重症化すると死亡することもあります。
・猫白血病ウイルス感染症
唾液中にウイルスが多く含まれ、グルーミングや喧嘩などで感染します。
感染初期に、発熱や元気喪失などの一過性の症状がみられますが、すぐに回復し、
その後数か月から数年を経て発症します。
著しい免疫力の低下、貧血、白血病、腫瘍など様々な病気を引き起こします。
発症すると多くは死に至ります。
・猫免疫不全ウイルス感染症
多くは、猫同士の喧嘩の咬み傷から感染します。
初期には発熱、リンパ節の腫れが見られ、その後長い無症状キャリア期を経て、
猫免疫不全症候群と呼ばれる時期に入ります。
口内炎、慢性の下痢など、抵抗力の低下が招く様々な症状が現れ、次第に痩せ衰えて死に至ります。
室内飼いでもワクチンは必要?
完全室内飼いで、お外に出たことがない猫ちゃんでも、感染症を患うリスクはあります。
・母猫がウイルスに感染していた場合、母乳から感染する
・飼い主さんが、屋外でほかの猫を触った
・飼い主さんの靴や服にウイルスが含んだ唾液や排せつ物に触れた
・新しく猫を迎え入れた
・来客がどこかで猫を触ったうえで家に来た
などの感染経路が考えられます。
どのワクチンを打てばいいの?
猫のワクチンは、上記の病気を予防する複数のワクチンを組み合わせた「混合ワクチン」で、3種混合~7種混合などがあります。
完全室内飼いの場合には、3種混合ワクチンがおすすめです。
猫ウイルス性鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症、猫汎白血球減少症の3種類が予防できます。
いずれも感染力が強く、空気感染をする恐れがあるため、室内飼育の場合でもワクチンが推奨されています。
外出をする猫には、3種混合に加えて、猫白血病ウイルス感染症を加えた4種混合、
さらに猫クラミジア感染症を加えた5種混合があります。
また、猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)のワクチンは、混合ではなく単体で接種する必要があります。
ワクチンの副反応
ワクチンの副反応として、猫ちゃんによっては体調が悪くなったり、
稀にアナフィラキシーショックを起こすこともあり得ます。
アナフィラキシーショックは、ワクチン接種後10~30分以内に起こることがほとんどですので、しばらくは動物病院にいるなどして様子を見ましょう。
アナフィラキシーショックの症状:けいれん、血圧低下、興奮、よだれ、嘔吐、呼吸困難など
そのほかの副反応
・顔が腫れる
・目の周りが赤くなる
・発熱
・元気消失、食欲低下
・下痢、嘔吐
・体のかゆみ
など
ワクチン接種後に、上記のような症状が現れたら、すぐに動物病院を受診しましょう。
ワクチン接種にあたっての注意
ワクチン接種による副反応が出た場合すぐに対処できるように、
ワクチン接種はできるだけ午前中に済ませましょう。
午後の時間に接種した場合、数時間後に副反応が出ても動物病院が閉まってしまい対処できなくなる場合があるためです。
ワクチン接種後は、激しい運動などは控えて、安静に過ごしましょう。
ワクチン接種時期について
子猫の場合、母乳から受け継いだ免疫力(移行抗体)がありますので、生後数週間はワクチンを接種してもその効果が得られません。
この抗体が切れるころには(生後2~3か月くらい)ワクチン接種が必要となります。
1回の接種だけでは十分な抗体が作られないため、1か月後にもう一度追加接種をします。
成猫は、毎年1回のワクチン接種をしましょう。