コラム
COLUMN
2019.01.17 動物の病気
【獣医師解説】犬の外耳炎 耳や頭を描く時の対処法
犬の外耳炎は多くの犬にかかりやすい病気の1つです。明らかに耳の周囲を痒がったり、耳の匂いがきつくなったりといった症状が現れるため、飼い主様も病気に気付きやすく動物病院への来院理由としてもとても多くを占めています。早期発見がしやすいことからすぐに外耳炎が治ることもあれば、なかなか外耳炎が治らなかったり、1度良くなってもすぐに再発することも多いのがこの病気の特徴です。
外耳炎とは?
外耳炎とは名前の通り外耳という場所に炎症が起こる病気のことです。外耳とは耳の穴のところを指し、鼓膜までの道の一部もしくは全体に炎症が起きてしまいます。
鼓膜の奥、つまり外耳の隣には中耳があり、さらにその奥には内耳という部位が存在します。外耳炎が進行するとどんどん炎症が広がっていき、次第に中耳炎を起こし、さらに進行すると内耳炎起こしてしまう危険性があります。もしも外耳炎が中耳や内耳にも波及してしまった場合は治療が困難になるケースが多いため、外耳炎が見つかった場合放置をせずに早めに治療を行いましょう。
外耳炎の原因
外耳炎の原因として多いのが、アトピー性皮膚炎や食事アレルギーなどの免疫疾患です。耳だけ炎症を起こす子もいれば、皮膚全体に炎症が起きる子もいます。
また副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)などの内分泌疾患を発症している場合や、耳疥癬などの感染症、耳毛などが原因で外耳炎が起こることもあります。
外耳炎を発症すると、その部位のバリア機能が弱まってしまうため、常在菌である皮膚細菌やマラセチアなどの真菌が感染してしまい、ますます外耳炎が進行していきます。
外耳炎の症状は?
外耳炎の症状は飼い主様が気付きやすいものが多いです。耳が赤くなる、耳・頭・首を掻く、頭を振る、耳垢が出る、耳が臭うなどです。
もしも外耳炎が長期にわたり進行した場合は、痛み、音への反応の低下、斜頸(首を傾ける状態)、眼振(目が左右に振れ続ける)、などが見られることもあります。
外耳炎の検査は?
耳鏡検査…外耳および鼓膜の状態を確認します。炎症の程度によっては外耳が腫れて鼓膜までの道が塞がってしまうこともあります。またポリープや異物の有無を確認します。
耳垢検査…耳垢の性状を把握し、顕微鏡により感染している原因微生物を観察します。
細菌培養検査…耐性菌の感染などが疑われる時に行います。
画像検査…中耳炎や外耳炎が疑われる時などにレントゲンやCTなどを用いて画像検査を行うことがあります。
その他全身の検査…外耳炎の原因となる別の病気が存在していると考えられる時に、血液検査や画像検査など様々な検査を行い原因を突き止めます。
外耳炎の治療法は?
まずは外耳洗浄により耳垢で汚れた外耳を綺麗にします。外耳炎が治るまでは、綺麗にしてもすぐに耳垢が溜まるので良くなるまでは定期的に動物病院に通院する必要があります。
また、外耳炎の原因によっては外用薬(点耳薬)を用いて炎症を引かせ抗菌します。
痛みがひどく、外耳洗浄がうまくできない場合は内服薬によって痛みを抑えることもあります。
外耳炎の進行が重度の場合や、腫瘍などが原因の場合は外科手術を行うことがあります。
繰り返す外耳炎の治療法は?
一度外耳炎が治ってもすぐに再発したり、特定の季節で必ず再発することは珍しくありません。その場合はアレルギーや内分泌疾患などの病気が隠れている可能性が高いので、検査によりその病気を特定し、外耳炎治療と並行して治療していく必要があります。
外耳炎の予防法は?
定期的に自宅で耳洗浄を行い、外耳を綺麗に整えておくことが重要です。
しかし、綿棒などの使い方を間違えると逆に外耳を傷つけ、外耳炎の原因になることも多いので、自宅での耳洗浄のやり方や頻度については、獣医師と相談して決めましょう。
また、外耳炎を発症している時はより外耳は傷つきやすくなっているため安易に自宅で耳洗浄をしてしまうと悪化させてしまうケースもあります。上記のような外耳炎の症状が見られた際には、外耳炎が治るまで動物病院で耳洗浄してもらうい、良くなってから自宅ケアに切り替えることが望ましいです。
まとめ
外耳炎は進行し慢性化してしまうと治療が困難になり回復までに長期間必要になるケースが多々あります。外耳炎の症状は飼い主様も気付きやすいものが多いので、もし愛犬の様子で気になることがございましたら早めに動物病院に相談しましょう。
また、一度外耳炎になった子は、再発することが多いです。しかし、何か他に病気が隠れていない限り、自宅でのケアを丁寧に行うことで予防することが可能です。自宅ケアの方法や頻度についても獣医師と相談して決めていきましょう。