福井藤島どうぶつ病院 福井藤島どうぶつ病院

コラム

COLUMN

2020.07.06 最新医療機器

身体への負担が少ない手術

高い安全性と最小限の苦痛を目指して

当院では手術するにあたり、動物への全身麻酔のリスクと痛みをできる限り軽減できる手術法をご提案しています。
もちろん全ての病気を手術で治すことはできません。また、外科手術は治療効果が非常に高い反面、麻酔などのリスクも内科治療などと比べると高いものです。そのため当院では、外科手術を行うことが動物たちとご家族の負担を最小にすると判断した場合にのみ手術をお勧めしています。

麻酔時間が大幅に短縮する「サンダービート」を使った手術

サンダービートは、従来の外科用デバイスに用いられる高周波電流と超音波振動の技術を融合させた先端医療機器であり、①血管を封入する、②組織を剥離する、③組織を把持する、④切開する、⑤出血時に止血する、といった手術の基本動作を全て高い性能で行うことが可能です。
この機械を導入している動物病院は全国的にも少数ですが、当院ではより安全で、より負担がかからない手術を行うために福井県で初めて導入しています。

サンダービートの特徴

  • 手術時間が大幅に短縮されるため、動物たちへの負担が減少します
  • 身体の中に極力、縫合糸(異物)を残さない手術が可能です
  • 安全かつ確実に止血・切開が可能であるため、難易度の高い手術もより安全に行うことが可能です
  • 去勢・避妊手術から悪性腫瘍摘出手術など様々な手術で使用可能です

去勢・避妊手術をはじめ、多くの手術では血管を縫合糸で結び、切断するという動作の繰り返しが必要になります。
ここで問題となるのが『縫合糸を用いた血管操作にかかる時間』と『縫合糸反応性肉芽腫(縫合糸アレルギー)』です。

サンダービートは、縫合糸を使用すること無く、血管のシール(密封)および切断を瞬時に行うことが出来るため、体内に残る縫合糸を圧倒的に減らし、手術時間を大幅に短縮することが可能となります。

縫合糸反応性肉芽腫(縫合糸アレルギー)の危険性

近年『縫合糸反応性肉芽腫(縫合糸アレルギー)』という病気が増えてきています。この病気は手術後数カ月~数年後に手術部位が腫れてきたり、体内や皮膚に肉芽腫ができる病気です。
この病気は身体に残った縫合糸に、身体が過剰な異物反応を起こすことで発症すると考えられています。この病気を発症した場合、発生した肉芽腫と身体に残った縫合糸を外科手術で摘出しなければいけません。

また、摘出が出来ないほどに内臓器と癒着している場合は、ステロイドや免疫抑制剤の投薬(多くで一生涯の投薬)が必要となります。
どの子が発症するかは予測できないため、可能な限り身体に縫合糸を残さないことが唯一の予防策となります。

サンダービートの使用が適応となる主な手術

  • 去勢・避妊手術
  • 腹腔内腫瘍摘出
  • 乳腺腫瘍切除
  • 体表腫瘍切除
  • 子宮蓄膿症
  • 脾臓摘出
  • 軟口蓋過長症 など

麻酔のリスクを軽減するために

去勢・避妊手術、腫瘍切除、歯石除去、骨折整復手術など、これらは全て全身麻酔を必要とします。
しかし、全身麻酔には確実にリスクが存在し、100%安全なものではありません。当院では、この麻酔リスクを可能な限り0%に近づけることが重要であると考えています。

手術前に動物の全身状態をしっかりと把握する

手術前の動物の全身状態によっては麻酔リスクや、使用できる麻酔薬の種類、起こり得る合併症のリスクなどが変わってきます。そのため、手術前の全身状態を把握するために術前検査を行うことがとても重要です。
当院の術前検査は、ご家族への問診や動物の触診・聴診から始まり、全身麻酔薬の代謝・排泄で重要な肝臓・腎臓機能について調べる血液検査、心肺機能を調べるための画像検査などを行っています。
これらの検査結果から、手術前の全身状態を把握し、どのレベルのリスクが存在しどの麻酔薬を使用するべきなのかを判断します。危険な状態の動物を高リスクとして獣医師・看護師が共通に意識し、術中の状態が急変した場合に迅速な行動ができるようしっかりと準備する。当たり前のようですが、少しでも安全な麻酔管理ができるように力を合わせていきます。

動物に合わせた麻酔薬の使用

麻酔薬をいくつか併用することで副作用が発言しにくいと立証されているため、当院の全身麻酔では動物と手術内容に合わせて、鎮痛・鎮静・筋弛緩を満たすよういくつかの薬を併用して実施します。
また、当院では動物が感じる痛みを最小限にするために、複数の鎮痛剤を使用するマルチモーダル鎮痛法や、全身麻酔だけでなく局所麻酔なども積極的に行っております。

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