コラム
COLUMN
2020.04.22 Cat Friendly 動物の病気
【獣医師解説】猫ちゃんの飼い主さんに知っておいてほしいこと
おうちで過ごす時間が増えている今、
猫ちゃんを飼っている皆さんにぜひ知っておいてほしいことをまとめてみました。
すでにご存知のことも多いかもしれませんが、参考にしていただいて
愛猫さんとの日々をより良いものにしていただけたらと思います。
ストレスに弱い
猫ちゃんは一見、自由に生活していてストレスなんか無関係に見えるかもしれません。
しかし元々単独行動をする生き物ですから、人間を含めた同居動物の存在をストレスに感じやすいです。
また慣習的な(変化のない)生活を好むため、生活環境の変化もストレスとなります。
どの程度のストレスを感じるかは猫ちゃんの性格にもよりますが、一般的に
- 引越し、部屋の模様替え
- 来客
- 花火や工事などの騒音
- 放っておいてほしいときに構い過ぎる
- トイレが汚れている
- エサ皿や猫砂が変わった
- 多頭飼育
などがストレスになると言われています。
自宅で過ごす時間が増えた今、猫ちゃんを構ってあげたくなってしまうと思いますが、
いつも飼い主様がいない時間は猫ちゃんのリラックスタイムですから
できるだけそっとしておいてあげてくださいね。
構って〜と寄ってきたときにはたくさん遊んであげてください。
もちろん動物病院への通院もストレスになりますから、当院では猫ちゃんのストレスをなるべく減らす取り組みを行なっており、
キャットフレンドリークリニック・ゴールドを取得しました。
猫ちゃんとのストレスフリーな生活のコツについてはこちらを参考にしてください。
【動物看護師執筆】猫ちゃんとのストレスフリーな暮らしのためにできること
ストレスに起因する病気が多い
猫ちゃんはストレスを受けやすく、さらにストレスが原因となってしまう病気があります。
代表的なものとしては
- 胃腸炎(食欲不振、嘔吐、下痢)
- 特発性膀胱炎
- 心因性脱毛(腹部などを自分で舐めて脱毛してしまう)
- 猫ヘルペスウイルス感染症(ネコカゼ)
- 猫伝染性腹膜炎(FIP)
などです。
FIPは致死的な感染症ですが、その他の病気に関してはストレスを減らすことが治療や再発の予防に重要となります。
しかし猫ちゃんのストレスの原因を正確に把握することや、原因を完全に除去することは困難であることが多いため、
治療にも時間がかかることが多いです。
少し話は変わりますが、他に原因がわかっている病気として、「飼い主さんの喫煙→猫ちゃんの消化器型リンパ腫」があります。
猫ちゃんの体に付着したタバコの成分を毛づくろいで体内に取り込んでしまい発症するとかんがえられていますので、注意してください。
完全室内飼いをしましょう
猫ちゃんが外に行きたがるから…と外に出している方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、外の世界は猫ちゃんにとってとても危険です。
主な理由を以下にあげます。
- 外の猫とケンカしてしまう(襲われる)
猫ちゃんは縄張り意識が強いので、外の猫のテリトリーに侵入してしまうとケンカになります。
脱走して帰ってきたら噛まれていた、ケガをしていたといって来院する猫ちゃんは少なくありません。
猫ちゃんの口や爪には多くの細菌が存在するため、傷は小さく見えても深部に膿が溜まってしまい、
切開して洗浄が必要になることが多々あります。
- 感染症にかかる
猫エイズ(FIV)はケンカや交尾など、猫白血病(FeLV)はグルーミングなどを介して感染します。
外猫界ではこれらのウイルスが蔓延しており、感染リスクは高いです。どちらも発症してしまうと根本的に治療することはできず、予後不良となってしまいます。
また近年話題となっているSFTSはマダニによって媒介され、猫では致死率60%と報告されています。
SFTSに感染した猫の飼い主や診察した獣医師への感染も報告されており、とても危険です。
他の猫の糞やネズミ、カエルなどを食べると消化管寄生虫に感染することもあります。
他にも交通事故にあってしまったり、毒性のあるものを食べてしまったり、望まない妊娠をしてしまったり、よその敷地に糞尿をしてトラブルになったり…と沢山望ましくないことが待っています。
防げるはずの病気や事故で命を落としてしまわないよう、猫ちゃんは必ず室内で飼育してあげてください。
観葉植物に要注意
猫ちゃんが食べてはいけないものとして玉ねぎやチョコレートなどは有名なのでご存知の飼い主さんは多いと思います。
それ以外にも、猫ちゃんは肉食のため植物に含まれる毒素を解毒することができず、700種類以上の植物が猫にとって有毒と言われています。
特にユリ科やサトイモ科などの植物は致死的な中毒を引き起こすことがあります。
特効薬などもないため、もしも食べてしまった場合にはすぐに動物病院で吐かせるなどの処置をしてもらってください。
中毒になる植物の種類や量などには個体差があり、未だ解明されていないことも多いです。
そのため何をどの程度食べたら絶対に危険/大丈夫とは言えません。
中には花粉を舐めたり、植物が浸かっていた水を舐めただけで亡くなってしまうケースもあります。
猫ちゃんが安全に暮らすために、お部屋に植物は置かないようにしましょう。
不調を隠す傾向がある
猫ちゃんの病気のサインはとてもわかりにくいことが多く、調子が悪いことに気づくのが遅くなりがちです。
以下に病気のサインかもしれない行動を挙げるので、チェックしてみてくださいね。
- 何度もトイレに行く
- トイレ以外のところで排泄する
- 毛づくろいしなくなった
- 爪研ぎをしなくなった
- 毛艶が悪くなった
- 気性が荒くなった
- 高いところに上がらなくなった
- おしっこの量が増えた
- よく水を飲むようになった
- 食べる量は変わらないorふえているのに痩せてきた
- よだれが多い、口臭がきつい
- 口をクチャクチャさせている
- 部屋の隅に隠れる
などです。
当てはまることがあれば、年だから…という判断をせず、動物病院に相談しましょう。
おしっこ検査だけでわかる病気もある
実は、おしっこを検査することでたくさんの病気を検出することができます。
例えば
- 結晶が出ていないか(尿石症)
- 細菌や炎症細胞が出ていないか(膀胱炎)
- 濃いおしっこが作れているか(腎臓病)
- 尿糖が出ていないか(糖尿病)
などがわかります。
膀胱炎や高齢の猫ちゃんで多い慢性腎臓病など、猫ちゃんはおしっこ関係の病気が多発します。
猫ちゃんを病院へ連れてることは少しハードルが高いと感じている方も多いと思います。
その場合でも、まずおしっこの検査をすることで簡単な健康診断になりますからおすすめです。
おしっこの採り方についてはこちらをお読み下さい。
キャリーに慣れさせましょう
わんちゃんと違い、自宅からほとんど出ることのない猫ちゃんは、病院などへ連れていくにも苦労することがあると思います。
「キャリーに入る=病院に行く」と嫌な思い出になってしまうと次からなかなか入ってくれなくなってしまうこともあります。
キャリーに慣れさせておくと、通院の際のストレスも軽減されますし、災害などのときにも一緒に避難することができます。
普段からキャリーをお部屋に出しておいて、出入りしたりその中でくつろいだりご飯やおやつを食べることができるようトレーニングしておくとよいでしょう。
通院の際におすすめのキャリーの条件
・プラスチック製
→布製のものよりも、汚れた際など手入れがしやすく清潔に保つことができます。
・上が大きく開くタイプ
→前から手を入れて出すのは、怖がりの猫ちゃんにはより恐怖を与えてしまいます。
・上下に分かれるタイプ
→上を外してタオルで目隠しすることで、診察時に猫ちゃんに与えるストレスが軽減されます。
・扉が簡単に取り外しできるもの
→診察後、組み立てに手間取ると猫ちゃんに不安を与えてしまします。
キャリーの中には普段使っているタオルなどを入れてあげるとよりリラックスできます。
怖がりの子は、キャリーの上からもタオルなどで目隠ししてあげるとよいでしょう。
これから購入される方、買い替えを検討している方はぜひ参考にしてくださいね。
長くなりましたが、おうちの猫ちゃんの健康観察にお役立ていただけたらと思います。
些細なことでも、何か気になることがあればご相談くださいね。